夜間尿がおきる原因は?尿トラブルに関係の深い五臓の「腎」とは
夜中にトイレで何度も目が覚めるといった悩みをもつ方が加齢とともに増えていきます。漢方では、尿トラブルの原因は、下腹部の水分代謝・冷えなどが関係していると考えています。特に、夜間尿などの症状は、漢方で考える五臓の「腎」の機能が低下することで起こります。「腎」の機能低下で起こる症状には、例えば、カラダがむくむ、尿が減少する、頻尿になる、失禁するなどがあります。今回は、夜間尿などの尿トラブルと関係の深い五臓の「腎」や、尿トラブルによく利用される漢方薬についてくわしく紹介をします。
夜間尿の原因となる五臓の「腎」との関係は
高齢者の頻尿や夜間尿といった尿トラブルは、漢方では五臓の「腎」の機能の低下によるものが多いと考えています。
「腎」は成長・発育・生殖を管理しており、人間が生きるために必要な生命エネルギーの源であるため、「腎」の機能が低下すると老化現象が起こります。
「腎」が正常に働けば、「腎」の気(エネルギー)は全身に水分をめぐらせ、カラダに必要なものは外に漏れ出させないようにします。「腎」の機能が低下すると固摂作用(カラダの中から水分が漏れ出すのを防ぐ作用)も低下するため、頻尿などの現象が起きるのです。
特に男性は「腎」の影響を受けやすいため、食事・生活などそのときの体質にあわせて補腎する(「腎」を補う)ことが大切です。
夜間尿など尿トラブルが起きる原因
排尿トラブルの原因には、大きく分けて熱証と寒証のふたつがあります。
熱証はカラダに熱がこもっている状態で、尿の量が少なく色が濃くなります。寒証は、カラダが冷えている状態で尿の量が多く色が薄くなります。
頻尿・夜間尿・尿失禁などの排尿トラブルは、カラダの冷えや、先天的な虚弱・老化・過労などが原因により起こります。高齢者の方は「腎」が弱くなるため、泌尿器官や下半身が衰え、カラダが冷えるため、腰がだるい・耳が聞こえにくいなどの症状がよくあらわれます。
「腎」を正常に保つためには、「腎」の不調のサインを早いうちから見つけておくことが大切です。
「腎」に不調があらわれるサインとは
「腎」が弱くなると、毎日の食事から得られる「後天の精」を補うことができなくなります。カラダに必要なエネルギーが不足すると、臓腑(内臓)に栄養と潤いを与えることができなくなります。「腎」の不調は主に、皮膚・足腰・耳・脳・目・髪・泌尿器にあらわれます。次のような症状がある場合は、「腎」に不調があらわれているサインです。「腎」の衰えを防ぐために、もう一度生活習慣や食事を見直しましょう。
- 尿が出にくくなったり、頻尿になったりする
- 髪の毛がパサパサする
- 足腰がだるくなる
- 小さい文字が見にくい
- 耳鳴りがする
- 白髪が増える
- 皮膚が乾燥する
- 火照りやすくなる
- しびれる
「腎」の不調を起こさないための注意点とは
足腰の冷えは「腎」の陽気(カラダを温める力)が消耗するため注意が必要です。特に冬は「腎」に大きな負担をかける季節です。冬のような寒い季節は、次のような行動に注意しましょう。
-
カラダを冷やすものをよく食べる
冷たい飲み物や食べものだけでなく、トマト・キュウリなどの夏野菜はカラダを冷やす作用があるため注意が必要です。
-
ダイエットをする
ダイエットは、カラダに必要な栄養が不足する原因となります。気(エネルギー)が不足するためカラダを温める力が弱くなります。
-
大量に汗をかくような運動をする
激しい運動をすると、カラダに必要な水分が失われてしまいます。特に冬の激しい運動は「腎」に大きな負担をかけます。
-
長湯をする
カラダを温めるためにお風呂に入ることはとても良いことですが、長湯をするとカラダに負担がかかるため、カラダに必要な気(エネルギー)も消耗してしまいます。
-
睡眠不足
睡眠はカラダに必要な気(エネルギー)を補充するために必要です。特に冬は、動物が冬ごもりをするように、早く寝て太陽とともにゆっくり起きることが大切です。
尿トラブルに利用される漢方薬について
尿トラブルには、それぞれの人の体質や症状に合わせた漢方薬を利用します。漢方薬に含まれている生薬にはそれぞれ異なる作用があり、生薬を組み合わせることによって頻尿や夜間尿などの排尿トラブルだけでなく、全身の状態を整えることができます。
今回は尿トラブルに利用される漢方薬や含まれている生薬について説明をします。
-
八味地黄丸(はちみじおうがん)
八味地黄丸は主に、「腎」の機能が低下した方に利用される漢方薬です。
体力が中等度以下で手足が冷えやすく、疲れやすい方に向いている漢方薬です。カラダがむくみやすい、口の中が乾燥しやすい、かゆくなりやすい方にも適しています。高齢者に起こりやすい足腰の痛み、かすみ目、排尿困難、頻尿、高血圧にともなう症状の改善に利用されます。カラダ全体の機能を改善する働きもあります。
八味地黄丸にはジオウ・サンシュユ・サンヤク・タクシャ・ブクリョウ・ボタンピ・ケイヒ・ブシといった生薬が含まれています。
-
牛車「腎」気丸(ごしゃじんきがん)
牛車「腎」気丸は八味地黄丸に「ゴシツ」「シャゼンシ」を加えた漢方薬です。尿量が少ない方、腰痛のある方に利用されます。
体力が中等度以下で手足が冷えやすく、疲れやすい方に向いている漢方薬です。カラダがむくみやすい、口の中が乾燥しやすい、かゆくなりやすい方にも適しています。高齢者に起こりやすい足腰の痛み、かすみ目、排尿困難、頻尿、高血圧にともなう症状の改善に利用されます。
特に足腰の痛みやしびれ・むくみがある方に適しています。
牛車「腎」気丸には、ジオウ・サンシュユ・サンヤク・タクシャ・ブクリョウ・ボタンピ・ゴシツ・シャゼンシ・ケイヒ・ブシといった生薬が含まれています。
八味地黄丸・牛車「腎」気丸は補陽剤とよばれています。これは、カラダの中に陽(温める力)が不足しているときに利用されています。